幸せの香り
「いい匂い~」
フレグランスロングバーの店内で一番多く発せられる言葉です。
そして、その言葉を言って、しかめっつらをする方はいらっしゃいません。
自然と笑顔がこぼれ、こちらまで幸せになります。
匂いを感じ取るのは、五感(視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚)のひとつである「嗅覚」です。
嗅覚は他の感覚と異なり、脳の中でも「感じる脳」と言われる大脳辺縁系に直接届くため、
人間の本能や感情に結び付いた記憶と密接な関係があると言われています。
つまり、嗅覚は最も感情を刺激する感覚なのです。
その感情のひとつに「幸せ」がありますよね。
では、私たちを幸せにしてくれる香りとは、一体どんな香りなのでしょうか?
そもそも幸せとは?
これは、人それぞれ違いますし、語り始めるときりがないので、今回は脳の中で何が起こっているのかをお話します。
簡単に言うと、幸せ=脳内で発生する電気信号です。
その電気信号が俗に言う「幸せホルモン」と呼ばれるモノです。
オキシトシン:安らぎを与え、不安や恐怖心を和らげる。
”愛情ホルモン”とも言われ肌のぬくもりや、触れ合いでも分泌する。
セロトニン:自律神経のバランスを整え、精神を安定させる。
太陽の光を浴びると生成が活性化される。
ドーパミン:やる気を与え、達成感、快感をもたらす。
”ご褒美ホルモン”とも言われ、興奮作用がある。
人によって、幸せの定義が違うのは、この脳内物質のバランスが違うからなのです。
そして、良い香りや、好きな香りを嗅ぐと、オキシトシンとセロトニンが分泌されるというのです。
アロマテラピーの世界では、よくローズやイランイランがオキシトシン、ラベンダーやセージなどがセロトニンの分泌を促すとされ場面や気分で使い分けなどもされますが、最も感情を刺激する嗅覚だからこそ、何より本能的に良いと感じた香りに反応を示すのです。
また、嗅覚は、香りによって記憶や感情が蘇るという特性(※プルースト効果)を持っています。
だからこそ人は、どこかで経験した懐かしい香りを「幸せな香りだな」と感じることが多いのです。
カレーやお味噌汁の香りが漂ってきた時、お腹がすいたという感情だけではなくて、どこか懐かしく幸せな気持ちになるのは、昔、お母さんの作った料理やその情景を思い出しているから。
お母さんの生み出す匂いは、無条件に落ち着き、ほっと幸せを感じられるように、脳が記憶しているのです。
このように、香りは幸せの感情を呼び覚ましてくれます。
ということは、「幸せにつながる良い香りの数」を増やせばあなたの日々の暮らしがより豊かになるのではないでしょうか。
過去に体験した香りは、感情と結びつき今のあなたを作っています。
嗅覚を刺激することによって、より嗅覚の恩恵を受けることができることは、以前もお話ししましたが、
新しい香りと出会ったとき、嗅いだ瞬間から、それはあなたの記憶の一部となります。
人生の豊かさは、出会った香りの数と質に比例しているのかもしれません。
新しい香りとの出会い方は、様々です。
朝起きてすぐ窓を開け、新鮮な空気をたっぷり吸いこむ。しだいに、季節や天気、周りの状況により香りが変わることにも気づくでしょう。嫌だと思っていた雨の香りも、突然心地よくなったり、好きになることだってあります。
些細な香りでも少しずつ丁寧に、意識すると新たな感情が生まれるのです。
香水も、同じです。
基本的には、本能的に良いと感じるものが一番。
しかし、未体験の香りを感じることによって、新しい価値観が生まれてきます。
好きな香りのレパートリーが増えると、その日の気分や予定、ファッションによって香りを選ぶという楽しみも増えますよ。
「幸せにつながる良い香りの数」を増やす。そして、その香りに包まれて過ごす時間を増やす。
香りを味方につけた生活を、香り好きの方は、知らず知らずのうちに実践されているのかもしれませんね。
「いい匂い~」
と言って表情が緩み、幸せになるのは、あなただけではありません。
そのあなたの笑顔によって、周りにも幸せが生まれるものです。
参考資料
・香りの百科事典 丸善株式会社 谷田貝光克・編
・幸せを引き寄せる「香り」の習慣 株式会社 幻冬舎 成田麻衣子・著
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