香料のはなし ムスク編
「クレオパトラの鼻がもう少し
低かったら歴史は変わっていた」
世界三大美女とされる、
エジプトの女王
クレオパトラのことを指した
有名な言葉です。
同じ鼻でも、彼女は嗅覚の感度も素晴らしく、香り使いの達人としても有名でした。 ムスクの香りをあびるように使い、ローマの権力者アントニウスを魅了したといわれています。 自らを魅力的に見せるため、香りを武器として利用するほど、知性の高い人物だったのでしょう。 官能的で魅惑的な香りを有し、古代から、人間社会で香料以上の役割を担ってきたムスクの香り。 香水を作る上でも、なくてはならない香料です。
そもそも、ムスクって何の香りなのでしょう?
ムスクは、オスの麝香鹿(じゃこうじか)の香嚢(こうのう)という部位から得られる分泌液を乾燥したもの。その香りでメスを引き寄せたり、縄張りを示したりしています。 香り自体は、アンモニアのような獣のような、不快な臭い。しかし、ごくわずかの量を香水に加えるだけで、豊かさと共に香りに広がりと持続性を与え、それぞれの香りの特徴を遠くに運ぶことができるのです。
麝香という漢字は、「鹿の放つ香りが矢を射るように遠くまでとぶ」ということを表しています。麝香鹿が生息していたのは、広大な、ヒマラヤ山脈の高地。香りは、よほど遠くまで飛ばなければ、メスを引きつけることはできなかったのでしょう。
ただ、その魅惑的な香りから麝香鹿は乱獲され、現在ジャコウジカは絶滅の危機に瀕しており、ワシントン条約によってその商業目的の取引を制限されています。 現在は、市場に出回っているほとんどが合成ムスクで、その化学は著しく進歩しているのです。
ムスク香料は嗅覚の一時中枢である嗅球の特定領域に入力され、高次脳へと伝わることが明らかにされており、これがムスクの香りがフェロモンのような生理作用をもたらす要因とも言われています。
また、女性がムスクの香りを長時間使用すると、特定のホルモンバランスが整い、その結果、肌もキレイになるという研究結果もでています。
ムスクは、その深みのある香りから香水のラストノートに使用されることが多い香料です。クレオパトラのように、相手を魅了することに用いるのも良いですが、柔らかな甘みが心を落ち着かせてくれるので、自宅でのリラックスタイムに使用するにも最適ではないでしょうか。
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