世界最古のクリスマスギフト
今や、年中行事の一つであるクリスマス。
キリスト教の行事であったクリスマスが、信者でない日本人に祝われるようになったのは、100年ほど前とのこと。宗教的儀式として捉えていないため、西洋とはまた違う自由なスタイルで進化してきました。そんな中でも外せないものが、クリスマスギフトです。
12月に入り、大切な人へ、また自分自身へなど、頭を悩ませている方も多いのではないでしょうか?
そんなクリスマスギフトを選ぶ前に、昔話を少しだけ…
もともとクリスマスは、イエス・キリストの降誕(聖人や神様が誕生すること)をお祝いする日。
よく「キリストの誕生日」と言われることがありますが、新約聖書ではキリストの生まれた日を特定していないため、誕生日ではないという説が有力です。またキリストが誕生した当時は、「誕生日」という概念が一般的でなかったため「生まれた日」はそれほど重要視されていなかったようです。
そんなイエス・キリストの誕生の際に駆けつけた3人の賢者がいました。彼らがキリストに贈った贈り物こそ、クリスマスギフトの起源と言われているのです。
一人目の賢人
Melchior/メルキオール博士
贈り物「王権を象徴する黄金」
二人目の賢人
Casper(Gaspar)/カスパール博士
贈り物「受難の死を象徴する没薬」
三人目の賢人
Balthasar/バルタサール博士
贈り物「神性の象徴である乳香」
『そしてその家にはいって、母マリヤとともにおられる幼子を見、ひれ伏して拝んだ。
そして、宝の箱をあけて、黄金、乳香、没薬を贈り物としてささげた。』
(新訳聖書マタイによる福音書2章11節より)
この3つの贈り物にはそれぞれ意味があり、黄金は現世の王、乳香は神、没薬は救世主を表すとされています。
黄金は昔から最も価値の高い金属。特に王様に関する器具、装身具として用いられていたので、キリストを王として認めるのに相応しい贈り物だったのでしょう。
乳香と没薬は樹液。フランキンセンスとミルラという言い方の方がピンとくるかもしれません。
古代エジプトではミイラ作りに防腐剤として用いられるなど貴重で神聖なものであったフランキンセンスとミルラ。古くから、宗教上の儀式に用いられ祭壇で焚かれました。芳しい香りの煙は崇拝する神と人間とを仲立ちするものであり、天上の神を喜ばせるもの。また、人々の願いを神に届けるものでもあったのです。
キリスト生誕の頃も、乳香や没薬は人を救うものと考えられていたため、救世主と崇められたキリストに相応しい贈り物だったのでしょう。
現代でも、キリスト教の教会や寺院では、フランキンセンスやミルラを焚く習慣があり、高尚な香りを感じることができます。またアロマテラピーの中でも多く用いられている香りであり、スパイシーで落ち着きのある香りは、香水の原料となることもしばしば。私たちは、古くから、その麗しい香りの恩恵を受けてきたのです。そしてその香りが、キリスト誕生の場面にも香っていたとなれば、より神秘的な力を感じずにはいられません。
あなたは、クリスマスにどんな香りで過ごしますか?
聖なる香りと過ごす。また、大切な方へ香りを贈る。
今年は、いつもより香りにこだわってみるのはいかがでしょうか。
素敵な香りに包まれるクリスマスは、あなたとあなたの大切な人々の時間を、より特別なものにしてくれます。
《参考資料》
・調香師の手帖 朝日新聞出版 中村祥二・著
・香りの百科事典 丸善株式会社 谷田貝光克・編
Recommend